“横並びで安心”の呪縛
事務所移転やら何やらでずっと忙しくしていましたが、昨日は久しぶりに美容院でカットとヘアカラーをしてもらい、いっときのんびりした時間を過ごしました。
その時のスタッフさんとの雑談で「仕事は楽しいですか?」と聞かれたことから美容師さんの働き方の話しになりました。美容業界は人手不足でスタッフ集めに苦慮しているお店が多いというのは以前から聞いていましたがその実態は…。
細かいことは割愛しますが、
その美容院は今年に入って5人もスタッフが退職してしまったそうです。
会社としては新規募集もしていますが、なかなか応募がなく、あったとしても入社までには至らず、減ったスタッフの穴埋めを4人のスタッフで回しているので、“休む時間もなくて大変なんですよ”とのことでした。
どういういきさつで5人も退職してしまったのかは聞きませんでしたが、スタッフさんとの会話にその理由が表れています。
★他のスタッフもすぐ近くにいる店内で、お店への不満ともいえる話しをするスタッフにちょっとドキドキしてしまいましたが、他のスタッフの気持ちも同じ、ということでしょうか…。
○給料が安い…こないだ交渉して少し上がったんですけど、それでやっと他の業種の人と同じ水準になれたかな、って感じですよ。同じ年の友達と比べたらまだ低いです。
○長時間労働…朝10時から夜8時まで、時間ぴったりに終わるわけじゃないし。残業代? そんなのもらったことないです!
○休憩が取れない…スタッフが減っちゃったし、そうじゃなくてもお客さんが来たらすぐに対応しなくちゃいけないので、店内で待機してなくちゃいけない。しかも30分とかまとまって休めることなんてないし。自分の好きなように使える(外出もできる)休憩が取りたいです!
○休みが少ない…休みはシフト制で火曜の他に、場合によっては週2日取れるくらい。有給なんて取れないですよ。他のスタッフに迷惑かかるし。
とにかく忙しさのために身体の疲れはもちろん、精神的にも疲れが溜まっている、そうです。
「う~ん、それは大変だね。でも美容業界はどのお店も同じような労働条件ですよね」
「そうなんですよ!どの店のオーナーも“この業界はそれが普通”って思ってるから変わらないんですよ。それがいやなら独立するしかないんですよね」
美容業界に限らず、“この業界はそういうもんだ”という考えが根強く残っている業界は沢山あります。もちろん、良い面もあるのですが、労務管理の面では“違法”になることがほとんどです。
経営者側は、その違法な労務管理や働き方を改善しようという考えがない。
“他の店も同じなんだから”、“これまで何年もこのやり方でやってきたんだから”、“労基署の調査?これまでなかったんだから大丈夫でしょ”という横並びの考えに安心してしまっている。
その結果が次のような悪循環を招いています。
○新規募集を出しても応募がない
○やっと採用してもすぐに辞めてしまう
○女性スタッフは妊娠すると復職せずに辞めてしまう
○スタッフ数が不足する中での営業で在籍スタッフの疲れ、不満が溜まる
○改善を求めてもなかなか受け入れてもらえない状況に在籍フタッフも退職を考えるようになる
私は、このような“社員”の方からの話しや、実際の労務トラブルの相談(会社側からの)での社員からの要求を聞くたびに、“社員は自身を守るための様々な情報をよく集めて知っている”と思います。
反対に会社側は昔からのやり方、考えに固執して、なかなか変わろうとしない、と思っています。
人手不足も深刻な中、同業他社と同じこと(悪い習慣)を続けていては自社を選んではもらえませんし、今いる社員も失いかねないのですが、横並びの呪縛を解くのは大変なことだな、といつも感じています。
先に記載した美容院では、さすがにこのままでは残っているスタッフをつなぎ止められないとオーナーが考えたのか、営業時間を短縮し、これまで夏季休暇は交代制だったものを店舗自体を休みにして社員を休養させることになったそうです。その点にはスタッフさんは満足しているようでした。
『働き方改革』というのは大手企業のものと思われがちですが、中小企業こそ社員が働きやすい、辞めたくない会社になるにはどうすればいいのか? を社員とともに考えて変わっていく勇気が必要ではないかと思います。