社員との信頼関係はどこまでも続くのか
こんにちは。中小企業のバックオフィス業務をサポートする社会保険労務士の渡辺です。
“うちは社員との間に信頼関係があるから”このような言葉を経営歴が長い社長から聞くことが多いです。
どういう場面で聞くかというと、私との初対面で、会社の労務管理状況のヒアリングを進めていくときです。
労働時間管理をしていない、残業代を支払っていない、就業規則がない、労働契約書を交わしていない、など簡単に言うと「労務管理なんて何もしてないよ」、「でも、うちは社員と信頼関係があるから、そんな細かいことに文句を言ってくる社員は一人もいない」ということです。
何十年も会社を経営してきた。会社の創業から成長期、社長自身がバリバリに仕事をしている姿、又は経営が厳しい中でも知恵を絞り、社員と共に切り抜けてきた姿、そして社員の結婚、子供の誕生などの様々な出来事…社長も社員もお互いのことを良く分かりあっている。だからそこには厚い信頼関係がある。
そして、残業代を支払っていなくても、有給休暇を与えていなくても、そこはなあなあの感覚でこれまでやってきて、社員からは何の文句も出てこなかった。
中小企業にはこのような会社が沢山あります。
私が、そのような社長達と接してきて感じるのは、やはり起業して、社員を何人も雇って事業を大きくしてきた方というのはある種のカリスマ性を持っている、ということです。人を引き付けるオーラというか、愛嬌というか、憎めなさというか。だからこそ多くの人の協力を得て会社を成長させ継続させることができたのだと思います。
だから…残業代を支払わなくていい、というわけではありませんが、これまでは社長の人柄とパワーでそれがまかり通ってきたのです。
ですが、社長も代替わりを考える頃、残業代などと細かいことを言わず社長を支えてきた社員達も定年を迎え始め、若い世代への交代が始まります。
若い世代の社員達は、社長が頑張ってきた姿とか、会社の歴史とか、そういうものを尊敬する気持ちは持ちつつ、現実的です。
当然ながら、働いた時間分の給料はちゃんと払ってほしい、できれば残業はしたくない、有給休暇はきちんと取得したい、と考えていますし、自分が納得できないことは会社に質問してきます。
「そんな細かいことを言う社員は採用しないよ」という社長もいらっしゃるのですが、いやいや、これからの時代は「そんなことを言ってる会社には入社しないよ。他に労働条件がいい会社はいくらでもあるからね」と誰からも振り向いてもらえない会社になってしまいます。
労基法を守る、ということに反発を感じられる社長もときどきいますが、まあ、法律を守るのは当然として、良い社員を採用するため、会社を存続させるために必要なことなんだと考えて、社内を変えていただきたいと思います。
では、また次のブログで!