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採用面接時の既往歴の質問

コロナ禍の中でも建設業や介護職、その他体力を使う仕事などでは人手不足が続いています。常時人材募集をしているけど、ほとんど応募がない…。という嘆きを経営者の方から伺います。

そんな中で時々応募者があると、なんとしても採用したい! と意気込んでしまいますよね。

その人を採用しないと後がないのではないか、とか、多少能力不足に思えるが、そこは入社後に教育していけばいい、など、自分の中の“採用したい”という欲求に合うように判断基準を変えてしまって、採用してから“会社にマッチしない人材だと気づいた”という話はよくあります。

採用は、その後少なくとも数年間は一緒に働くことが前提となるとても大切なものです。焦る気持ちはわかりますが、そこを抑えて慎重に進めたいですね。

ところで、中途採用に関してよくご相談を受けるのは、「既往歴(特にメンタルヘルス不調)に関する質問を面接でしても良いか?」というものです。

これは非常に難しい問題です。

経営者の立場からすると、健康な社員を採用したいと考える気持ちがありますよね。でも、簡単に「昔かかったことがある病名を教えて」と言えるものではありません。

職業安定法には、求職者の個人情報の取扱いについては、“その業務の達成に必要な範囲で求職者等の個人情報を収集し、その目的の範囲内で保管し、使用しなければならない”という規定があります。

先日、これに関して参考になる報道がありました。

ある大手菓子メーカーの工場でアルバイトの採用面接の際に応募者の体重、ウエスト、既往歴などを面接票で質問したことが職業安定法に触れるおそれがあるとしてハローワークから行政指導を受けた、というものです。

会社側の意図としては、体重やウエストのサイズは採用後の制服を作るため、既往歴は小麦を取り扱うのでアレルギーのある方がその原因物質に触れないようにするため、ということなのですが、問題だと考えられるのは、面接を行う前に面接票に記入させていたことです。

制服のためのサイズ等は採用が決まった人にだけ聞けば良いし、アレルギーに関しては小麦を取り扱う仕事であることを事前に明示すれば、既往歴を記入させる必要はなかったのではないかと思われます。

で、“面接での既往歴の質問”に話を戻しますが、上記事例からも、求職者に既往歴を聞くのは避けた方が良いのではないかと思います。

職業安定法では、「本人の同意がある場合」を例外としていますが、もしどうしても必要な場合は、募集している仕事に対してどんな既往歴がどんな影響を与えるため、という丁寧な説明をしたうえで本人の同意を得る必要があるでしょう。

ですが、どんなに採用時に配慮したとしても、入社後に病気が発症してしまうことは誰にでもあります(メンタルヘルス不調に限らず)。そのような場合に備えて、しっかりした休職規定を設けておくことは会社にとってはリスク管理になります。

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だれもが健康でフル稼働できる状態なのが望ましいと思います。が、だれでも一時的に体調を崩すことはありますし、もしかするとメンタルヘルス不調以外の長期療養が必要な病気にかかってしまうこともあります。それは、人間ならだれでも抱えているリスクであり、どんなに健康管理に気を使っている人でも避けようのないものです。

まだまだ誰でもみんな、というわけではありませんが、最近では、がん治療や不妊治療、その他さまざまな病気の治療をしながらでも働き続けられる環境が整いつつあります。

が、中小企業だと体調不良の社員に合わせた仕事を与えることができないとか、部署異動もできない、など、制約が多く雇用の継続が難しい面があります。この点、何とかならないものか、といつも心に引っかかっています。