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セカンドキャリア

最近では、定年退職後に新たな職業に就くことや、定年を待つまでもなく転職して新たな仕事に就くことなどをセカンドキャリアというようです。

ある意味、私自身も会社員から開業社労士になったことは“セカンドキャリア”というのかもしれない、と思いましたので、そのことを書きたいと思います。

私の場合は後から考えてみれば…ということで、セカンドキャリアに関するHow to本やネット情報などの手順に従って行った、というものではありません。

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先日、仕事である駅に降りました。その駅前には数年前にとある会社の立派なビルができていました。そのビルを見上げて、私が働いていた頃とは全く違う、立派な建物になってすごいな、と思いました。

その会社(A社とします)は、私が社会保険労務士として開業する直前まで社員として働いていた会社です。私が社員だった当時は、最寄り駅から徒歩20分ほどの、ちょっと不便な場所にA社はありました。

本題とは関係ないのですが、実は、現在A社の立派なビルが建っているその土地は、私がA社に就職する前に働いていた会計事務所があった場所です。私が当時のA社の社長に誘われて、その会計事務所を退職してA社に入社。その後紆余曲折あり、私はA社を退職。その数年後に、私が働いていた会計事務所があった跡地にA社がビルを建てた、ということになっています。

ただの偶然なのですが、私が関わっていたその土地とA社の間に何か縁のようなものを感じます。

本題に戻って、私がA社に転職したのは40代になってからでした(ここが本来でいえばセカンドキャリア、社労士開業はサードキャリアなのかもしれません)。

A社では人事部所属ということと、上場準備をしていくということで、個人的にはそれまで小規模企業の社員や派遣社員として積み重ねてきた人事関係の仕事の集大成がその会社でできる、と考えて会計事務所の仕事にも未練があったのですが、転職を決意しました。年齢的にも、この転職が最後でA社で定年まで働くと考えており、社員数も400名程度の安定した会社に転職できて良かった、と当時は思いました。

実際に仕事は社員の採用から退職に至るまでの人事関係の全てを網羅し、大変充実した面白いものでした。

ところが、入社から数年で、リーマンショックが起き、A社もその影響を受けて会社更生法の適用を受けることになってしまったのです。

このときに社員は半分の人数まで減りました(こういういい方は良くないかもしれませんが、この時に、整理解雇の実務を学びました)。

幸い、私は最初のリストラには含まれていませんでした。が、年齢的なこともありますし、いずれは退職勧奨を受けることもあるだろうな、と考えていました。

また、リストラの手続きをする中で、A社で40年近く、定年まで働けると全く疑いもせずにいた社員がある日突然、解雇を言い渡される。そんな方達から、“いくら退職金を上乗せされたからと言って、気持ちのうえで納得できない”などなど様々な言葉を聞いて、会社がこういうとき非情なのは仕方ないとしても、自分の人生を自分の意志ではなく会社のために方向転換させられるのは嫌だな(動機)、とつくづく思いました。

この時に、自分の引き際を自分で決められる仕事に就きたいと強く思い、その時点で自分には何ができるのだろうか?(キャリア、スキルの棚卸)と考えに考えた末に出した答えは社労士試験に合格して自分で仕事を始めよう、ということでした。

そして、何とかその翌年の試験で合格でき、合格の翌年の3月末で退職、4月1日から開業となったわけです。

当時はセカンドキャリアという言葉はなかったですし、段階を踏んで準備する余裕もなく、自分一人でこの先何十年も生きていくこと(ライフプラン)を考えて必死でした。

ただ、毎日次のようなことを悶々と考えていました。

・定年(60歳)までA社で働けるかどうかわからない状況になった

・再就職が難しい年齢になってからリストラされても困る

・他人の腕に頼るのではなく、自分の腕で生きていく(ダメだった場合は、自分が悪かったとあきらめがつく)

結果として、社労士になって来年で10年になります。なんとか細々とですが、経営を続けてこられました。

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で、先日A社のビルを見上げて自分に問いかけてみました。

あのまま会社に残っていたら、もしかしたらこのビルの中で働いていたかもしれない、もしかしたら今後上場会社になるかもしれない、けど後悔の気持ちはあるか?

答えは、「全くない」でした。

どちらかというと組織の中で仕事をするのが得意でない私は、個人で自由に動ける今の状態がとても自分に合っている、ということが最近になってわかりました。無理をして自分を抑えて会社組織に所属せず「辞めて良かった」と思います。

そして、会社員でいえば、定年という区切りがいずれやってきます。でも、今の仕事なら自分が健康で努力を続けていれば、定年は関係なくこれまで通りに働き続けることができます。

自分からセカンドキャリアを目指したわけではなく、そうせざるを得ない状況になっての現在なのですが、あのとき開業という決断をして本当に良かったと思っています。ただし、自営業ですから様々なリスクはありますので、自分で備える必要はあります。

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今、人生100年と言われる時代の中で、労働分野では2021年4月から70歳まで何等かの形で雇用を続けることが努力義務となります。

現役で働く期間が約50年と考えると、セカンド、サードキャリアくらいまであってもいいかな、と思います。

ただ、だれもが転職や起業などをしてもうまくいくわけではない、という現実もありますので、はやり言葉に踊らされず、堅実に自分のことを研究して進むことが必要かと思います。

そして、万が一失敗したとしても、やり直しはいくらでもできると思います。

私も、社労士を開業したころより10歳は年を取っているわけで、体力は落ちていると思いますが、でも、何があっても人生に負けない気力は持ち続けていきたいと思っています。

ということで、今年も大変お世話になりました。2021年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

Anna人事労務サポート 渡辺明子