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前向き? 後ろ向き? 副業・兼業 

政府は働き方改革の一つとして、副業・兼業を推進してきました。

2020年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定され、労災事故が発生した場合に本業と副業の賃金を合算して休業補償されるようになるなど以前より改善されています。

ガイドラインの冒頭に副業・兼業の現状として、副業・兼業をする理由が書かれています。

・収入を増やしたい

・活躍できる場を広げる

・能力を活用、向上させる

など、前向きな理由が主ですが、中に、

・1つの仕事だけでは生活できない

と、“後ろ向きな理由”(当方の個人的な感想です)があります。

ガイドラインで政府が、“1つの仕事だけで生活できない”ことが“常態の人”がおり、“掛け持ちで仕事をして1人前の収入を得ること”を認めているのか、と気持ちが沈みました。

副業(掛け持ちで働くこと)について私の経験を少し…。

数十年前の古い話ですが、私は派遣社員として働いた経験があります。

当時は、正社員のように会社に縛られず、派遣で集中して働いて、お金が貯まったら長期で海外旅行に行く、というような、今でいう自分探し的な生き方をする女性がはやり始めたころでした。

私が派遣社員になったのは、いろいろな会社で経験を積みたい、だけど、そのあとどうする、という目標があるわけでもない、現実逃避のような、でも自分で望んでのことでした。

ひとつの契約が終われば次の契約がすぐに決まったし、就職をしようと思えばそれほど苦労せずに就職できた、そんな時代です。

自分で望んだとは言え、派遣社員というのは働いた日についてしか給料がもらえません。だから長期休暇の時期、年末年始、夏季休暇、ゴールデンウィークなどは収入がガクンと減ります。これは分かってはいたけど大変厳しかったです。

当時、一人暮らしをしていたので、家賃など毎月相当額の固定費が発生します。そのため、派遣の他に、夜や土日、長期休暇中に他のアルバイトを掛け持ちし、年間の収入がある程度一定になるようにしていました。

仕事は探しに行けばあったし、会社員だけではなく、フリーランサーとして働く人夜の商売の人などなど、いろいろな人と出会えてそれはそれで私の人生の収穫になったと思っています。

が、いくつかの仕事を掛け持ちで働くって、やっぱり肉体的、精神的両面で疲れるものです。当時は若かったのでそれができましたが、今は無理、ではないけれどできれば避けたいと思います。

 

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コロナ禍で、どの企業も経営が大変な今、ANAが人件費の大幅な削減策を公表しました。これにより社員の平均年収は昨年比3割減になるということです。

・冬季賞与見送り

・一般社員の基本給削減

・希望退職

・無給で休職できる制度の新設

 

そして更に社員の副業範囲を大幅に広げる方針だということも公表されました。これまでも勤務時間外に家庭教師をするなど「個人事業主」としての副業は認めていたが、今回は「他の会社とも雇用契約を結べる」ようにするということです。

これは会社が、これら人件費削減策により、当社の収入だけでは生活できなくなることを認め、副業を解禁するから社員それぞれの生活は自分で考えて成り立たせてほしい、とういメッセージです。

 

これまで安泰と思われていた正社員が、前出のガイドライン記載の“1つの仕事だけでは生活できない”事態となる時代です。

もちろん、コロナがなければこのようなことにはならなかったと思いますが…。

 

コロナ後は、副業・兼業をすると言っても、どの企業も人員削減をしたい厳しい状況です。実際に、9月時点で新型コロナ関連の解雇等は6万人を超えています。副業を認められても、その副業先が見つからない人も多く出てくるでしょう。

 

副業・兼業は、他の企業で社員として働くことだけでなく、自分で起業したり、個人事業主として仕事を得たりすることも含まれます。が、起業などで家族の生活を支えられるほどの収入を得ていくのは簡単なことではありません。また、どんな人にでもそのような能力があるわけでもありません。

 

最初に書いた、前向きな理由(自ら進んで副業などをする)の人にとっては、副業は苦にならないと思います。が、“副業せざるを得ない”人にとってはそのような状況になってしまったことを自分に納得させるところからの非常に厳しい働き方の始まりとなります。

 

ただ、冒頭に書いたように、政府の方針からもコロナがなくてもいずれはこのような働き方の時代はくることが見えていましたので、それが少し早まっただけ、と前向きにとらえて進んでいくことが大切なのでしょう。